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ゼミの概要
栗崎ゼミは以下の科目の履修を通して参加することが出来ます。
- 日本語学位プログラム: 専門演習(政治学演習)I, II, III, IV 及び、それに付随する卒業論文
- 英語学位プログラム:Advanced Seminar I, II, III, IV 及び、それに付随するThesis
政治学演習(栗崎周平)は2013年から始まり、2021-2023年はサバティカルのため休止し、2024年度には9期生、2025年度には10期生を迎えます。このゼミでは、広く「実証的あるいは分析的な(国際)政治学研究」を行います。教員によるテーマは設定せず学生プロジェクトを推進するワークショップ型のセミナーとして運営してきました。これは米国の大学におけるHonors Thesis/Honors Research Seminarに相当しますが (例えば https://shorturl.at/agmY5)、早稲田政経の場合は米国のそれと異なり2年間(あるいは2.5年間)継続するというセットアップです。
研究テーマ
広く「実証的・分析的な政治学研究」を行う限りにおいて、研究テーマは参加学生が自由に設定できます。担当教員は国際政治学における理論研究(ゲーム理論分析)ないし実証研究(データ科学)を行うことを得意としていますが、広義の政治学の範疇で、政治問題、社会問題、経済問題、秩序問題、不正義問題、政策問題などから課題や関心を説き起こし、モデル分析やデータ科学の手法を駆使する研究に関心がある方を歓迎します。
これまでのゼミ生による研究が採用した分析手法の割合は、従来型の計量分析が5割、データ科学や因果推論を意欲的に導入するものが3割、ゲーム理論を用いた数理的な理論研究がおよそ1割です。分析対象の内訳は安全保障が約4割、国際政治のその他に関する現象の分析が3割、国際政治経済に係るものが2割、比較政治に部位類されるものが1割です。これまでのゼミ生による研究の例を以下に列挙します。括弧内は卒業後の進路です。
- 民主主義の後退democratic backslidingのゲーム理論分析(東大院経済)
- 投資ネットワーク上での人権規範のグローバル伝播のビッグデータ分析(早大院経済→UCSD政治PhD)
- 慰安婦を念頭においた戦時中レイプのデータ収集と分析(UBCロースクールJD)
- 対テロ対策とその後のテロ攻撃再発・抑止の空間統計分析(シカゴ院統計→ハーバード政策PhD)
- 移民と越境テロの相関についての計量分析
- 天然林vs人工林と武力衝突発生に関する空間統計分析(国内コンサル企業)
- 欧州諸国の政党マニフェストを機械学習でデータマイニングしたイデオロギー位置の推定(外資コンサル国内法人→ SE in 豪州)
- 同盟の非対称性と国際紛争への関与についての計量分析(外資コンサル国内法人)
- 日米同盟認識の変遷:ニューヨークタイムズ誌とジャパンタイムズ誌の比較テキスト分析(3大商社)
- 政治におけるinclusionと平和の持続性の計量分析(GAFA国内法人)
- 和平とテロ戦略の関係(外資コンサル国内法人)
- 中国政府の対台湾センチメント: 人民日報のテキスト分析 (外資コンサル国内法人)
- Okinawa’s Economic Growth and U.S. Military Deployment: Panel Analysis at the Municipal Level (財務省総合職)
ゼミの進め方
- 上述の通り、学生が研究プロジェクトを推進することを主目的とし、広く「実証的あるいは分析的な(国際)政治学研究」を行うこと、そしてそのアプローチはモデルやデータを扱うという二つの点で共通項をもちます。これまでも教員によるテーマは設定せずとして運営してきました。
- 研究プロジェクトのテーマは上記の通りですが、それに留まる必要もないと思っています。ただし、政治学で流行っている統計モデルや推定量や検定方法の開発、世論調査実験、自然言語処理を含むテキスト分析については他にそれを得意とする教員が政経学部にいます(順に、山本鉄平、多湖淳・小林哲郎、日野愛郎など)ので、それらのアプローチについては、そちらのゼミを選択することがパレート改善になると思います。
- 研究テーマやアプローチのほかに、どのようなアウトカム(プロダクト)をターゲットとするのかについては、理論モデルや仮説検証型の実証分析であれば論文やポスターというアカデミアで教員が生み出しているような従来型のプロダクトがあるでしょうし、新たなデータを収集するのであればデータセットの公開というプロダクトも社会科学における学術的なアウトプットとして従前的です。また、ある特定の範囲で定義されたデータについてある特徴量を算出するアルゴリズムという意味でのデータエンジニアリング的な実証研究であれば分析アルゴリズムをパッケージングしたソフトウェア、あるいはそのアウトプットとしてのデータセットがプロダクトになるでしょう。これは工夫次第では社会実装や事業化も視野に入れることが出来ます。さらにある推定量や検定方法の開発であればそれらをパッケージ化したコードもソフトウェアとして公表することは政治方法論(=政治応用統計処理?)では一般的です。前者は僕自身の共同研究(主に経済安保に係るもの)で社会実装・事業化を行なっており、後者は山本鉄平さんが得意とされています。
- 研究プロジェクトは個人プロジェクトを推奨し、他のゼミ生との共同研究はサイドプロジェクトとして推奨します。これは「問題発見→問い立て→解法・アタックプラン策定→解答→提案」のライフサイクルを学ぶためであり、またプロジェクトや議論にオーナーシップとアカウンタビリティを持つ自覚を養うためです。なお、個人研究を本格的に始めることはハードルが高いかもしれませんが、これまでの14年間の初等・中等・高等教育前半の集大成として取り組んでもらいます。初等・中等・高等教育の最初の2年間ではインプットを中心に行なってきたと思いますが、今後の人生でインプットと同様に(あるいはそれ以上に)重要なアウトプットにチャレンジしてもらいます。
- プロジェクトを完遂させて成功するのは基準を下げても5割程度です。とは言ってもプロジェクト頓挫・失敗はゼミでの学びとしては成功だと考えています。卒業後の5ー10年のスパンでは成功・成長の糧になっています。卒業後に海外トップ校でPhDを取得する人や大学教員など研究者になれた人は学部ゼミの研究でプロジェクトで困難に直面した人の方が多いようです(少なくとも当ゼミ比較)。なお、各自のプロジェクトは3年時から立ち上げ始動しますが、具体的な工程は「スケジュール」を参照してください。また、希望者は国際学会で研究発表を行う機会を探ります。日本の学会では学部生の発表の機会はありませんが、欧米の学会では可能です。コロナ禍前まで6名が米国での学会発表に臨みました。主にポスター発表を念頭に置いていますが、なかには口頭発表に挑み採択された猛者もいます。他の参加者からはPhDの学生だと勘違いされる程度に高評価を受けていたことを誇らしく思います。なお、2025年3月卒業生は, 2025年2月末から3月にかけてSeattleで学会が開催され、遠征費用を可能な限り支援します。
- 研究のレベルは高く、データサイエンスコンペや学内の論文コンペで優勝するゼミ生が多いことも特徴です。早稲田大学でのデータサイエンスコンペティション(第1回 2019)では栗崎ゼミのチームが最優秀賞を得ました。理工学やの経済学の大学院生チームを抑えて優勝できたことは、ゼミで試行錯誤していることが実は「均衡経路上の「正解」」であったことを示しています。データの背後にある現象のメカニズムを考え、目の前のデータが観察対象をどのようにモデルしているのかを吟味した上でmeasurementを考え、モデルとデータの対話や相性としての推定をデザインし、結果解釈を「書き手」ではなく「読み手」の視点から描写する結果の可視化という普段の作業が、テクニックを駆使する理工学や経済学の院生チームに勝てた要因だと考えていますし、審査員からは受賞理由としても同趣旨のコメントを頂きました。早稻田大學政治經濟學會論文コンクールでも担当教員が記憶しているだけでも2016年、2020年、2021年には佳作、学会優秀賞・優秀作を受賞しています。
- なお、数理モデルやデータ科学を使うことを標榜していますが、これら分析手法の講習会を行いません。担当教員(栗崎)にはそのような能力はありません。各自が用いる分析手法は千差万別ですのでどれか一つのモデルを取り上げることも、例えばゲーム理論や大規模言語モデルをちょっとずつ摘み食いすることも「ゼミ」の時間の使い方としては生産的ではありません。それにそれぞれの分析手法は日進月歩なのでゼミ生が扱う中でも任意の領域において最先端を教員がカバーすることは不可能です。基本的に各自ないし自主的なグループで勉強を進めて、ノウハウを共有することでこれまでは対処しています。
- ただし、数理モデル(応用ゲーム理論=ゲーム理論の政治分析への応用)に関しては、栗崎自身が別途に授業を担当していますので、そちらを受講していただくことがスムーズかと思います。そこでは栗崎が得意としている非協力ゲームを使った交渉モデルの危機外交や抑止戦略の分析がメインです(学生の要望によっては民主化や経済発展や政治暴力など比較政治学の領域における制度分析的なものにも対応してきました)。
スケジュール
- プレゼミ(2年生秋学期)
- Write your story: 1) the story that takes place five years from now; 2) Start with nirvana; and 3) Forget the “how,” as it is the killer of all great dreamers.
- 外交使節および経済安保データを使った実習・データ収集の基礎
- 研究関心分野の論文Show & tell (list of ten articles you love; skim through at least fifty articles)
(*) 英語学位プログラム・復学者のゼミ参加は現在のカリキュラム制度上「プレゼミ」には参加できません。演習IないしAdvanced Seminar Iないしその他最初の学期にWrite your storyと論文show & tellを集中的に行います。
- 演習I/Advanced Seminar I(3年生春学期)
- 研究課題設定のブレスト
- 研究関心分野の既存研究サーベイと自分の研究課題の距離の描写
- 演習II/Advanced Seminar II(3年生秋学期)
- 先行研究の再現分析とリサーチデザイン策定(トーイモデル)
- 必要な場合はデータ収集とデータ整理
- 演習III/Advanced Seminar III(4年生春学期)
- 分析継続、分析結果の解釈、頑強性チェック、議論・命題の確定
- 就活生は就活に全力
- 演習IV/Advanced Seminar IV(4年生秋学期)
- 分析結果の可視化、ポスター作成、論文執筆
- Write your story again: 1) let’s go out five years from there; 2) Redefine your nirvana, your future; and 3) Don’t write a story about what happened. Write your story, then make that happen.
選考について(提出課題など)
栗崎ゼミでは原則として書類審査で選考を行い面接は、担当教員がそれが必要だと認めた場合に行います。
休学や留学から復学する学生も選考を受けることが出来ます。
- 選考方法: 提出は二箇所に必要です
- 事務所への応募申請 (MyWasedaの申請フォーム?確認して下さい)
- 栗崎への個別課題提出 (Zoom面接は必要に応じて行います)
- 申請期間・提出期限: 2025年度開講募集
- 第1回選考
- 事務所への応募申請期間:2024年9月5日(木)から9月9日(月)まで
- 栗崎への個別課題提出期限:2024年9月11日(水)午後5時までにkurizaki@waseda.jpに送信
- 個別面談(確認事項がある場合のみ):2024年9月12日(水)から9月17日(火)まで
- 第2回選考
- 事務所への応募申請期間:2024年10月1日(火)から10月3日(木)まで
- 栗崎への個別課題提出期限:2024年10月7日(月)午後5時までにkurizaki@waseda.jpに送信
- 個別面談(確認事項がある場合のみ):2024年10月8日(火)から10月10日(木)まで
- 第3回選考
- 事務所への応募申請期間:2024年10月22日(火)から10月24日(木)まで
- 栗崎への個別課題提出期限:2024年10月25日(金)午後5時までにkurizaki@waseda.jpに送信
- 個別面談(確認事項がある場合のみ):2024年10月28日(月)から10月30日(水)まで
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個別課題
以下の項目について、kurizaki@waseda.jp宛にメールで送ってください。締め切りについては上記を参照。
1) 履修科目:履修の前提条件ではありませんが、バッググラウンドチェックを目的として、「国際関係論入門」「国際政治学」「国際政治史」「ゲーム理論」「計量政治分析」「比較経済制度分析」「公共経済」(←比較政治制度にあらず)やその周辺科目に関して、履修の有無、担当教員、教科書・参考書、そして学習到達度について自己評価して下さい。計量分析については使用したソフトウエア(RやPythonやSQL)の習熟度も記してください。
*副専攻を履修中(あるいは予定)は、その旨を記述。特にソフトウェア学、経済学(政治学科生の場合)、政治学(経済学科生の場合)は、履修内容を詳述してください。
*データ科学認定を取得済・中・予定の場も、その旨を記述
2) 言語能力: 第一言語(母語)、第二言語などそれぞれについての自己評価。
3) 研究テーマ:i) 関心を持つ国際政治上の政策問題、時事問題ないし歴史問題、ii) その問題の所在(なぜ問題なのか)、iii) その問題の政治学的な意味。合計500字以内。
4) 志望動機: 上記研究テーマに関する研究を行うにあたり、なぜ本演習なのか、他の演習ではないのか。500字以内。
5) 自己紹介: 今のあなたを形づくる上で、これまでに影響を受けた作品、体験、ないし出来事について500字以内。
6) 将来の希望進路、キャリアパス、夢、あるいは野望。
7) 課題:書式は自由ですが、日本語か英語を使用して下さい。
Choose one scientific research paper on any topic of your choice and submit a one-page summary in which you discuss (i) what question/problem is addressed, (ii) the significance of the question — why and how the author believes this question is important for our society, (iii) how the author attempts to answer the question or solve the problem set forth (e.g., the theoretical approach? Empirical approach? Or describe the research methods adopted in the paper), (iv) the findings, (v) How the findings advance our knowledge on the relevant topic, and (vi) any flaws or limits in its research that might change the author’s conclusion.
- 選考基準
ほとんど唯一の基準は、白けた態度を持っていないこと。何か意思をもって生活していることです。個別課題に含まれる既習科目の内容や志望動機は参考程度にしか用いません。成績表は履修科目と確認を主目的に用います。成績そのもの重視しませんが、説明できるかどうかには関心を持ちます。
質問のある方もkurizaki@waseda.jp までメールを送ってください。
ゼミ在籍生、卒業生、修了生
OBOGリストと彼・彼女たちの進路や現在のポシジョンなどのリストは教育・授業ページの下段をご覧ください。